人手不足や業務効率化、経営判断の高度化など、中小企業を取り巻く課題が多様化する中、DXやAI活用への関心はますます高まっています。
「デジタル経営カンファレンス2025 in 福井」では、生成AIの活用に関する基調講演をはじめ、現場の課題解決につながるAI導入事例や、県内企業によるDXの取組が紹介されました。
本レポートでは、当日の講演内容と事例のポイントを振り返ります。
デジタル経営カンファレンス2025 in 福井について
時代はここまできた、中小企業のDX/AI活用
「デジタル経営カンファレンス2025 in 福井」は、最新のデジタル経営トレンドや県内企業の実践事例を学ぶイベントとして開催されました。参加者が他の参加者や講演者と交流しながら、経営課題の解決方法やテクノロジーの活用について意見交換を行い、新たな変革の可能性やネットワークの広がりにつなげることを目的としたカンファレンスです。
当日は、生成AIの活用に関する基調講演に加え、中小企業の現場におけるAI導入事例、そして県内企業によるDXの取組事例が紹介されました。DXの推進が広がる中で、AIツールの進化と実務への活用が進んでいる状況を学ぶ機会となりました。
基調講演
【生成AI×DX】ビジネスで生成AIを使う最初の一歩を考える
講師:株式会社安藤芳園堂 代表取締役 安藤 謙輔 様
基調講演では、医療介護と生成AIのコンサルティングに携わり、中小企業診断士および薬剤師の資格を持つ安藤謙輔氏が登壇されました。
講演では、仕事で生成AIを活用する際の基本として、「安心・安全・ポジティブ」が示されました。特に、業務で活用するうえでは、まず安心・安全を優先することが重要であると説明されました。そのためには、生成AIの3大リスクである情報漏洩、ハルシネーション、権利侵害への対応が必要であり、こうしたリスク対策をガードレールとして整備したうえで、AI活用にブレーキをかけすぎず、前向きに進める考え方が示されました。
また、生成AI活用における失敗パターンとして、「禁止型」「放置型」「複雑型」「成果不可視型」が紹介されました。これらの失敗を避けながら、ポジティブな生成AI活用を組織に定着させるためには、方針やルールの整備が必要であるとされ、そのポイントとして、①ルールと基礎知識を固める、②おすすめの使い方を絞る、③成功事例を共有する、④トップが背中を見せる、の4点が挙げられました。
講演後半では、GPTsとGemsを連携させた活用例が紹介され、安藤氏が作成した決算書分析GEMとビジュアル化GASのデモが実演されました。あわせて、Googleが提供するNotebookLMについても、「あなたの資料専用のAIアシスタント」として利用する例が紹介されました。チャットエリアを活用した質問回答や要約機能、スタジオエリアを活用したコンテンツ作成など、実務での具体的な使い方が示されました。

事例紹介1
中小企業の現場が変わる!AI導入のリアルな突破口
〜成功事例から読み解く“できない理由”とその先にあるヒント〜
講師:株式会社エムティブレイン 代表取締役 山口 透 様
山口透氏の講演では、同氏が支援したAI活用による課題解決の4つの事例が紹介されました。いずれも、中小企業の現場で直面しやすい課題をテーマとした内容でした。
1つ目は、クリーニング店における顧客対応の平準化です。季節ごとに年1回発生する業務について、簡単にマニュアルを作成したいという課題に対し、NotebookLMに話すだけの方法で対応した事例が紹介されました。
2つ目は、雑貨メーカーにおける最適発注量の探求です。過剰在庫や欠品による販売機会の損失を防ぐため、MatrixFlowを活用し、需要予測と適切な発注量の算出に取り組んだ事例が示されました。
3つ目は、食品加工における業務効率化の取組です。販売先のWebEDIから翌日の受注情報をコピーしてExcelにまとめる受注処理について、VBAを使って自動化し、さらにChatGPTを使ってVBAマクロを作成する方法が紹介されました。
4つ目は、部品加工におけるQCD向上の事例です。利益率が低い原因を明らかにするため、手書きのテキストによる品質データをNotebookLMに読み込ませて分析を行った結果、赤字の要因として、緊急対応時の運賃などの輸送費が大きく関わっていることが特定されたと説明されました。

事例紹介2
ルネッサDXの取組
講師:株式会社ルネッサ 管理部 工事管理課 竹内 省三 課長、廣瀬 勇介 様
株式会社ルネッサ様からは、自社で進めてきたDXの取組について紹介がありました。同社は平成14年設立で、主に食品加工工場向けの自動化・省人化機器を開発・製造・販売しており、現在は約40名の社員で事業を展開しています。
ルネッサ様のDXの取組は、約10年前に講演者の竹内氏が管理部へ異動したことをきっかけに始まりました。当時は、データがバラバラでExcelへの手入力が多く、基幹書類も手書きで運用されていた状況であり、そこに強い危機感を覚えたことが取組の出発点だったと説明されました。
その後、電子帳簿保存法対応システムを内製で構築し、2023年より運用を開始しました。また、クラウド型のナレッジ管理システムを導入して1年間運用したものの十分に活用できなかったことから、新たにCRMシステムである「電子カルテシステム」を開発したこと、さらに機械図面統合管理システムを構築して2025年11月に本稼働予定であること、日報入力システムなどの整備を進めていることが紹介されました。
ルネッサ様のDXの取組は、基本的に内製で対応することを方針としています。単なるITシステムの内製化にとどまらず、DXの内製化を企業文化、すなわちDNAとして根付かせたいという考え方も示されました。あわせて、同社は経済産業省のDX認定を2024年1月に受け、2026年1月に再認定を受けたことも紹介されました。

カンファレンスを振り返って
基調講演と事例紹介1では、最新のAIツールの活用と具体的な活用事例が紹介されました。日々進化するAIツールへの理解を深めるとともに、AIを活用した課題解決が着実に進んでいる状況を知ることができる内容でした。
また、事例紹介2では、ルネッサ様によるDXの取組が紹介され、内製化を基本方針としながら、企業文化の変革も視野に入れた取組であることが示されました。
今回のカンファレンスを通じて、DXの取組が浸透し広がる中で、AIツールも進化し、活用が進んでいることがあらためて示されました。今後に向けては、DXの取組と現場の課題解決にAIを活用する取組について、自ら学ぶこととあわせて、支援に活かしていくことの重要性が示された内容となりました。
